いとうみとは

古来より、女性たちの手から生み出されてきた、「糸」。
衣食住の中の「衣」であり、生きるために布が必要でした。
現代は、自ら糸作り、布作りをしなくても暮らしていける、物質的に豊かな時代。

では、今を生きる私たちに、「いとうみ」は何を伝えようとしているのでしょうか?

日本古来の麻、麻糸績みに出会って5年半、まだまだひよっこですが、
糸を績み続けてきた私の体験から、感じたことをありのままお伝えします。

糸績みとは?

「糸績み(いとうみ)」とは、麻などの植物繊維を繋いで糸にするやり方のことです。
大麻繊維の場合、繋いだ糸に撚りをかけることを、「紡ぐ(つむぐ)」と言います。
種蒔きから始まり、布になるまでの工程の一つです。

糸績みは、地域によって呼び名や技術的にやり方が違ったりもします。
その土地ならではの、独自文化があるからです。
もともと糸績みはパーソナルなものなので、味噌作りように、各家庭ならではの工夫があったのですね。

大麻繊維の輝き

麻の産地である、栃木県鹿沼市。現在は栃木県産の精麻(せいま)から糸作りをしています。
麻引きによって精製された精麻は、白金〜黄金色をしており、輝きを放っています。
全身全霊で麻を栽培されている、麻農家さんの匠の技です。
糸作りにおいて「麻裂き」という工程がありますが、麻を裂くほど、さらに繊細な光を放ちます。

*農産物なので、その年によって精麻の質も変わります。
*自給用の麻は、時代や用途、地域によって違いがあるようです。

ありのままを映し出す鏡

日本の大麻繊維の輝きは、私たち人間の在りようを、鏡のように映し出します。
ニュートラルでバランスが取れているときは、大麻繊維の輝きと内なる輝きが共鳴するように、糸績みの時間も心地よいものとなります。
逆にアンバランスな時、麻裂きも雑になったり、いつもより多く絡んでしまったり、糸績みの時間も長く続かない時もあります。

その時の自分の状態が、すべて「糸」に出るのです。

誰でも日々の暮らしの中で、体も心も調子が良い時もあれば、悪い時もありますよね。
糸績みは、「どんな自分でも受け容れる」ということを、教えてくれます。

糸績みから繋がる叡智

「終わりなんかねえ。」
日本の大麻の種から布になるまで、すべての工程を一人で行える、唯一のおばあちゃん。

「本業では難しい、お金にはならなくても、続けていく。」
苧麻(ちょま)の糸績みを伝承しているおばあちゃん。
(2017年・宮古島市伝統工芸品センターにて)

「栽培から糸績みをはじめ、布になるまでには、たくさんの手間と苦労があってこそ。皆が助け合って、一枚の布になるのです。」
喜如嘉芭蕉布の平良美恵子様(2015年・自然布展にて)

「植物が語りかけてくるんだよ。」
大井川葛布の村井龍彦様(2014年・自然布展にて)

植物の種類は違っても、それぞれの言葉の意味が、深いところに響きます。
時空を超えて、先人たちの知恵と工夫、喜びや悲しみなど、いろんな想いに繋がり、胸が熱くなるときもあります。

そして、遥か昔から存在する植物や大自然は、私たちの命の源です。

いとうみは永遠

糸を績み続けていると、「淡々と糸を績む」ということの大切さを知ります。
「瞑想しているようだ」という方もいらっしゃいます。
糸績みは、自分と向き合う時間でもあるのです。

糸績みという、手わざを極めてゆくことは、自分自身を極めてゆくこと

「いとうみは、永遠」

この一文に、私がこれまでお会いした方々や、自らの体験や学びから受け取った叡智が結集しています。

日本独自の文化・精神性と、今を生きること

伊勢神宮では、神さまにお供えされる「衣」「食」「住」など、すべて自給自足でまかなわれているそうです。
最も重要な祭典である式年遷宮は、永遠の祈りを込めて、様々な技術の伝承が行われており、循環しています。
二十年に一度生まれかわる発想は、世界のどの国にも見られないそうです。
(「日本の原郷 伊勢神宮」伊勢神宮式年遷宮広報本部より)

日本には、剣道、柔道、弓道、茶道、華道、能、日本舞踊などの武道や芸術が多くあり、
体を使った技や形(型)から入って、精神も磨かれてゆくという文化がありますね。

昔は、生きるために布づくりが必要で、今とは環境も違います。
日々の営みの中で自然と共に、手わざが磨かれ、心の豊かさや、精神性を養っていたのではないか、と想像します。

古来より自分や家族、愛する人たちの幸せを祈り、糸を績み続けてきた女性たちのエッセンスは、
今を生きる私たちを優しく包み、時には力強く、希望の道を照らし続けています。

あなたにとっての真実を大切に

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
みなさんそれぞれに、考え、想い、望み、願い・・・あると思います。

あなたにとっての、真実を大切に。

ご一緒に糸を績みながら、分かち合えたら嬉しいです。
お会いできる日を、楽しみにしています。

*感謝*
Kyoko  Tasaka

2017.11.11